
「学びと、本棚」は、デザイナーや映画監督、アーティスト、漫画家など創作の最前線で活躍するみなさんに、自身の人生のなかで“学び”につながった1冊を紹介してもらうコーナーです。お守りのように大切にしたいもの、教訓にしたいものなど、その人それぞれのエピソードをうかがいます。
今回ご登場いただくのは、テキスタイルデザイナー/アーティストの氷室友里さんです。韓国・ソウルにて、7万人の来場者を動員した大型個展を今年3月末まで開催していた氷室さんが選んだ1冊とは?
『エモーショナル・デザイン:微笑を誘うモノたちのために』(ドナルド・A・ノーマン/新曜社)
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b456052.html
学生の頃から人を楽しませるものを作りたいとずっと思っていました。でも、そもそも人が楽しい・嬉しいと感じるのはどういう時なんだろう?人はどんなものに喜びを感じるんだろう?そう考えるうちに人間の認知や知覚の仕組みに興味が向き、その手の本を読み込んでいた時期がありました。そこで出会ったのが、この『エモーショナル・デザイン』です。

本書では、デザインは機能や使いやすさだけでなく、人の感情に働きかけるものとして扱っています。この中でノーマンは、人間の情動には本能レベル(見た目や手ざわりへの直感的な反応)、行動レベル(実際に使うときの感覚)、内省レベル(意味や記憶から後になって立ち上がる感情)という3つの認知レベルがあると語り、併せてたくさんの具体例を紹介しています。
学生時代にこの本に出会ったことで自分がやりたいデザインの方向性について解像度がぐっと上がり、何度も読み返して大切にしていました。最近、あるプロジェクトでこの本に立ち返る機会があり、今回ご紹介させていただきました。
2025年10月から2026年3月まで、韓国・ソウルのギャラリー「GROUNDSEESAW HANNAM」で、大型個展「JOY, TODAY」を開催しました。代表作の、ハサミでカットして柄をアレンジできるテキスタイル「SNIP SNAP」を中心に、見る角度で柄が変わったり、触れると色が変わったりするインタラクティブなテキスタイルを展示しました。


また、展示のタイトルである「JOY,TODAY(日本語では「今日の喜び」)」というテーマに合わせて、Tiny Moment SeriesというSNIP SNAPの小作品群を制作。日常の中で見つけた小さな発見や喜びをテキスタイルで表現していて、自分の原点と今の興味を合わせた思い入れが強い作品となりました。展覧会づくりの舞台裏は、JDNのインタビュー記事で紹介いただいています。
今年は展示の予定はありませんが、11月に表参道でポップアップショップを開催予定です。会期が近づいたらインスタグラムでお知らせします。
最近は自分自身の記憶や、なぜか惹かれてしまうものなど、個人的な感覚や体験に基づいた表現が醸し出す魅力への興味が強まっています。だから今は、作り手やアーティストが自分の感覚を綴ったエッセイや考察を読みたいなと思っています。

日本とフィンランドでテキスタイルを学び活動しているテキスタイルデザイナー/アーティスト。人と布との関わりを通して、日々に驚きや楽しさ、豊かさをもたらすことをテーマにテキスタイルブランド YURI HIMURO を立ち上げ、テキスタイルの開発や企業へのデザイン提供を行う。
近年では、LOEWEや PORSCHEとのSNSコラボレーションが話題になったり、韓国・ソウルでは 約900㎡の大型空間で個展「JOY, TODAY」を開催し、約7万人を動員するなど国際的に活動の幅を広げている。 受賞歴に、2018 Salone Satellite Award Third Prize、2021 Maison&Objet Rising Talent Award Japan など多数。
https://www.instagram.com/himuroyuri/