学びと、本棚-佐藤ねじさん

「学びと、本棚」は、デザイナーや映画監督、アーティスト、漫画家など創作の最前線で活躍するみなさんに、自身の人生のなかで“学び”につながった1冊を紹介してもらうコーナーです。お守りのように大切にしたいもの、教訓にしたいものなど、その人それぞれのエピソードをうかがいます。

今回ご登場いただくのは、クリエイティブディレクター・プランナーの佐藤ねじさんです。自身が主宰する「企画とデザイン」の会社ブルーパドルが設立10周年を迎えたねじさん。話題を生み出す広告づくりやホテルプロデュースなど多岐にわたるねじさんの1冊とは?

■「学び」につながった1冊

『厚利少売』(菅原健一/匠書房)
https://takumi.inc/books/sn436_9784910716039/

「たくさん作って安く売る」薄利多売をやめ、「少なく作って高く売る」厚利少売に切り替えよう、をテーマにした1冊です。核心にあるのは「価値=相手の変化量」という考え方で、作業時間や納品物の量ではなく、相手にどれだけの変化をもたらせたかで価格を決めること。目標利益から逆算して単価を設定し、顧客を絞り、浮いたリソースを品質に投下するサイクルが解説されています。

クリエイターは「つくる」ことには全力を注ぎますが、「値付け」については苦手そう。「プライシング」という概念を学べたのが一番大きかったです。いくらにするか、なぜその金額なのか。感覚や相場ではなく、相手にもたらす変化量から逆算して価格を決めるという考え方は、本当に大事です。

実はこの本が出る前から、著者のすがけんさんに直接教わっていて、厚利少売の概念は実践もしていました。だから読んだときは、普段聞いていた話が1冊にまとまっていて、改めて整理ができた感覚でした。

「価値=相手の変化量」は、すべてに役立つ概念。デザインも、戦略も企画することも、何かの価値を増やすこと。それは何の数値・事柄を変化させるのか?これを意識すると、非常につくりやすくなります。クリエイターにこそ読んでほしい1冊です。

■最近手がけたお仕事

・アドベンチャーワールド
リブランディングに参画。パークの本質的価値を見つめなおし、コンセプトを「地球でいちばん癒されるテーマパークへ」に策定。キービジュアル、Webサイト、新アトラクションの企画まで一貫して制作。他にも、ペンギンを味わいつくせるラウンジや、「10種類の動物カフェ」なども企画。フタコブラクダ、イルカ、カバ、カピバラなど、普通では絶対にありえない動物カフェが10箇所オープン。

・ブルーパドル10周年:CI・SI・サイト
自社も10周年を機にリニューアル。2カ月かけてブランド戦略をつくり、サイトも刷新。他にステッカーを貼るだけで何でもCIツールになる「SI(ステッカー・アイデンティティ)」なども制作。

■最近、または今後学んでみたいこと

Claude Codeに絶賛、大ハマり中です。もちろん時短や効率化などもすごいですが、個人的に一番嬉しいのは表現の幅・深さどっちもが増えること。

ブルーパドルは「0→0.1」の新しいものをつくることからスタートしている会社で、やりたいアイデアは1,000以上あります。

でも現実的な時間の中で「作っても作らなくてもどっちでもいいこと」は作らないまま大量にあります。それがClaude Codeによって、つくる速度が上がるし、パターンがめっちゃ作れるので、表現を深く試せます。つまり「探索空間」を拡張できる。表現の寄り道がたくさんできるようになりました。

これを自分のものにしていくことで、クライアントワークで提案できるメニューもすごく増えます。ただ広告・PR・SNS・イベント・Webなどだけ作るのではなく、社内ツールやアプリ、ゲームなど、そのクライアントにカスタマイズした本質的な課題解決の手段が爆増します。組織を強くしたり、クライアントの実行部隊の習慣を変えたり、もちろん事業そのものを強くしたり。そういう価値があり、これまで時間・予算的に無理だったことが実現できるようになります。楽しみすぎます。

■プロフィール

クリエイティブディレクター・プランナー。

2016年ブルーパドルを設立。商品、店、Web、こどもコンテンツなどを制作。代表作に「隠れ節目祝い」「ボードゲームホテル」「アルトタスカル」「0歳ボドゲ」「佐久市リモート市役所」など。

著書に「子育てブレスト」(小学館)など。主な受賞歴に、ACCゴールド、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭・審査員推薦作品、グッドデザイン賞BEST100など。