
多彩なクリエイターの視点と才能が交わるデザインフェスティバル「Featured Projects 2026」が、9月25日から27日までの3日間、コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」を舞台に開催されます。
今年で3回目を迎え、回を重ねるごとにアップデートする同イベントを企画・運営するのは、株式会社Featured Projectsの主宰者の1人である後藤あゆみさんです。キュレーションやプランニングを得意とし、学生時代からクリエイターを対象とした数多くのイベントや場づくりに携わってきました。
「学びのアンカーポイント」第2回では、そんな後藤さんの活動の根幹を成す出来事や、そこから得た教訓、Featured Projectsの一連の活動が見据える未来などをうかがいました。
――後藤さんの現在に至るまでの経歴を教えてください。
私は大分県の別府市出身で、高校から美術専門の学校に通い始めました。その後、京都精華大学のデザイン学部を卒業し、スタートアップ企業に就職して24歳で独立しました。そこからは、さまざまな企業のデザイン組織のPRやブランディングに携わりながら、クリエイターを対象にした場づくりなどを行っています。

現在はDCA Symphonyというデザインスタジオにも所属し、カリモク家具の「KARIMOKU RESEARCH」というプロジェクトを軸に、PRやプロジェクトマネジメント、ディレクションなどを任せていただいています。昨年の3月には、イベントの企画運営などを行う株式会社Featured Projectsを、大学時代から一緒に活動してきた共同代表の相樂園香と2人で立ち上げました。
――後藤さんはいつ頃からプロデュースする側に興味があったのでしょうか?
昔から好奇心旺盛な性格で、現代アーティストやファッションデザイナー、映像作家、イベントのプロデュースなど、いろいろな仕事に興味がありました。感受性が強く、素晴らしい作品を見たときの感動も大きかったですし、そういう作品を生み出す作家さんにも強い憧れがありました。でも、当時の地元はアートに触れられるような機会や場が少なく、将来自分がつくれたらという漠然とした思いがあったんです。
そんな中、高校生の時に大規模な国際芸術祭が別府で開かれることになりました。それを手伝う中で、国内外のいろいろな作家さんと出会い、アーティストを支援する側への関心がより強くなりました。

――学生時代はどんなことに力を入れていたんですか?
大学ではデジタルクリエーションコースという学科で映像やWeb、ゲーム制作を学んでいました。もちろん専門分野にも真面目に取り組んでいましたが、どちらかというと学外活動に力を注いでいました。
高校生の時から関西の美大生でアートプロデュース団体を作りたいという考えていて、「SHAKE ART!」という学生団体をメンバーの1人として立ち上げることになったんです。フリーペーパーの制作をはじめクリエイターのプロデュースのほか、関西の商業施設やデパートの催事場で、美大生がキュレーションする展覧会なども企画しました。私は2代目代表として大学時代の多くの時間を団体活動に使い、かなり力を入れて取り組みました。
――以前からアクティブに活動されていたんですね。「Featured Projects 2024」で後藤さんが話されているのを聞いた際、とてもパワフルで熱量が高い方だと感じました。そのエネルギーの原点になっているのはどんなことですか?
精神的に強くなったきっかけは高校生の時の出来事です。実は当時、家庭環境がとても複雑でした。兄弟が不良だったこともあり、深夜に不良が家に乗り込んできて暴れたり、車で拐われたり、バットを持った不良たちに、家のまわりを取り囲まれることも日常茶飯事でした(苦笑)。
経済的にも厳しかったので、最初は大学進学も反対されていました。でもどうしても行きたかったので両親に頭を下げ続け、最終的に奨学金で行くことができました。当時は自分のことに時間を使えない、集中できない、思うように何かを選択できないもどかしさをすごく感じていて……。だから学校でデッサンや制作する時間が本当に楽しくて、心の救いだったんですよね。その高校時代の経験が、今の活動のバネになっている部分が大きいですね。

――そうだったんですね。そうした経験の中から、後藤さんなりに学んだことや得たことがあればお聞かせください。
とにかくこのまま今の場所にいてはダメだと思い、地元を離れる努力をしようと決めました。「自分が動かなければ状況は変えられない」ということは、そのとき身をもって学びましたね。かといって家族から逃げたいわけではなく、自分が結果を出したり、活躍したりすることで風向きを変えたかったんです。だからこそ、絶対に仕事で結果を残すという覚悟が生まれたのだと思います
でも、あの経験があったからこそ今でもへこたれずに頑張れていますし、自分の精神的な基盤をつくる上でも、なくてはならない時間だったのかもしれません。自分のやりたいことができるのは当たり前ではないですし、大学に進学させてくれた両親にも本当に感謝しています。ちなみに、今は家庭環境もだいぶ良くなりました(笑)。

――Featured Projectsについても伺いたいのですが、どういったプロジェクトなのか改めて教えてください。
「よいものづくりは、明日を拓く」という信念を持って、多彩な表現者の方々とコラボレーションしながらデザインプロジェクトを展開しているチームです。具体的な取り組みとして、デザインフェスティバルの開催や、クリエイターを対象としたイベント企画運営、動画やWebマガジンなどのコンテンツ制作などを行っています。
――立ち上げのきっかけはなんだったのでしょうか?
東京で暮らすことが決まってから「デザインやつくる楽しさを知ってもらえるような大きなイベントを東京で開きたい」と、ずっと考えていました。
最初に機会が訪れたのは、私が株式会社ディー・エヌ・エーでデザイン領域専門のPR業務を任せていただいていた時でした。現在Featured Projectsの共同代表である相樂も運営メンバーとして誘い、2018年に渋谷を舞台としたデザインフェスティバル「Design Scramble」を開催しました。
その後、コロナ禍などの影響で継続が難しくなり、株式会社インクワイアのもとで2023年に改めて立ち上げたのが「Featured Projects 2023」でした。2024年まで同社の主催で開催してきましたが、昨年自分たちの会社を設立したため、3回目となる今年は独立して新体制での開催となります。

――Featured Projectsの開催において、工夫していることや大切にしていることはありますか?
年に1度のイベントですが、パターン化すると来場者はもちろん、主催する私たちも飽きてしまいます。そのため、双方が楽しめる工夫として“テンプレート化しないこと”を心がけています。登壇者はもちろん、出展者やクリエイターズマーケットの参加者も、連続で同じ方にならないよう毎回新しい方を発掘してお声がけしています。

「対話」というキーワードも重視していて、例えばクリエイター同士のトークセッションでは、できるだけ“ここでしか聞けない話”を引き出し、来場者に届けたいと考えています。そのため、登壇者の組み合わせは開催のたびにかなり熟考します。トークテーマをはじめ、無茶なお願いも結構しているかもしれません。
クリエイターの方々も顔なじみのほうが話しやすいとは思うのですが、あえて過去に対談歴のない意外なメンバーでセッションしていただくことで、予想しなかった化学反応が生まれることも。そうしたライブ感を、ぜひ楽しんでもらえるとうれしいです。
――新体制となるFeatured Projectsですが、今回のテーマや新たに取り入れたことなどを教えてください。
今年は「ものがうまれる、その『間』」をテーマにしていて、ものづくりの過程にフォーカスしています。これまでのように出展者の代表作を展示するだけではなく、制作プロセスがわかるような展示のつくり込みに力を入れています。

新たな取り組みの一つが、ライブパフォーマンスです。会場となるコクヨ品川オフィス・THE CAMPUSのホールは、4面スクリーンを備えた密閉空間という面白い構造をしています。この場所や空間ならではのプログラムを実施することが、私たちのイベントの個性になるのではないかと考え、ライブパフォーマンス・プログラムを複数実施することにしました。素敵な体験になると思うので、ぜひ楽しみにしていてください!
また、これまでゲスト1人と40人くらいの参加者が一緒にトークをする形式だった「ミートアップ」というプログラムを、今回「テーブルトーク」にアップデートしました。ゲスト1人を10〜15人の参加者で囲み、特定のテーマについて語り合います。Featured Projectsでは、作品だけでなく「人との出会い」も大切にしています。あえて人数を絞ることで参加者同士が繋がりやすく、より濃密で学びの多い時間になるはずです。

――Design Scrambleから始まりFeatured Projectsと回を重ねてきた中で、改めて気付いたことや思うことはありますか?
毎回反省点もすごく多いですが、自分自身がさまざまな才能やものづくりに感動をもらってきたので、今循環できていることがすごく幸せなことだと改めて感じています。「過去に参加したイベントの中でいちばん楽しかった」と言ってくださるクリエイターさんもいて、そうした言葉が励みになりますし、この活動を続けてきたからこそ生まれた多くの方々との絆を、これからも大切に積み重ねていきたいですね。
――今後の活動で力を入れていきたいのはどんなことですか?
クリエイターのドキュメンタリー番組をつくりたいと思い、YouTube で「MONOQROME(モノクローム)」というインタビュープログラムを始めました。昔から多くのドキュメンタリー番組に影響を受けてきたこともあり、さまざまなクリエイターの生き方や考え方を通して、次世代のキャリアに繋がる学びを提供できればと思っています。
あとは、さまざまな企業やクリエイターとコラボレーションしながら、イベントのような単発の場だけではない、育て続けられるような新たな場づくりにも取り組んでいきたいです。
――仕事でもプライベートでも、後藤さんご自身が学んでいきたいことはありますか?
いろいろな人の生き方や考え方に触れていきたいですね。同業者とは交流があっても、異業種の方と出会う機会は限られていて、視野が狭まる怖さも感じています。例えば、大ファンである「櫻坂46」の推し活を通して異業種の方と話すだけでも、新鮮な発見があります。映画や本、新しい場所など何でもいいので、自ら動いて知らないことを吸収する機会を作りたいです。
Featured Projectsが将来的に社会課題の解決につながることを目指し、得た学びを今後の活動に活かしていきます。
――最後に、学生や若手クリエイターが日々の制作の中で意識するとよいのはどんなことだと思いますか?
もしこれだと思えるものが見つかったら、コツコツでもいいので続けることだと思います。大変なこともあると思いますが、続けていれば遅かれ早かれ結果は出るので、とにかく諦めずにいてほしいです。
それと同時に忘れてはいけないのが、精神的に腐らないこと。年齢や経験を重ねても素直で柔軟な姿勢を持ち続けることは、実はすごく難しくて努力が必要です。それがなくなると、美しいものや素晴らしい作品も、どこか冷めてクリーンな視点で見られなくなってしまう。若いときはピンとこないかもしれませんが、クリエイターとしてとても大切なことだと思います。

文:開洋美 撮影:小野奈那子 取材・編集:石田織座(JDN)