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地域と出会い、学びが動き出す。「LIVE DESIGN School」がひらく、デザインと生き方の可能性

リスキリングという言葉が定着してきたいま、改めて「学ぶこと」の大切さとは何か? インタビューシリーズ「学びをひらく」では、その問いに向き合うべく、“学びの場”をひらく人々を訪ねます。

今回は、各地で活動するデザイナーを講師として、地域とデザインについて学ぶ「LIVE DESIGN School」に注目。講師の活動拠点を訪ねるフィールドワークやレクチャーを通じて、地域の文化や人々の営み、デザインの実践に触れるスクールです。

場の運営や学びの設計を担う株式会社LIVE DESIGN代表・ディレクターの安田翔さんに、スクールが生まれた背景と、学びが実践へつながっていく過程を聞きました。

「こんなに仲間がいたんだ」。出会いから生まれた学びの場

――LIVE DESIGN Schoolが生まれた経緯を教えてください。

きっかけは、2022年に出版された『おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる―地域×デザインの実践』(学芸出版社)という本です。日本各地で活動するデザイナーたちの実践を紹介した書籍で、出版後は各地から声がかかり、全国24カ所でトークキャラバンを開催しました。

安田翔さんポートレート
安田翔 株式会社LIVE DESIGN代表・ディレクター。大手人材企業にて人事・研修設計、地域工芸メーカーにて中小企業向けの経営教育を経験したのち、独立。地域文化を実践にひらく学びの場づくりに取り組む。2023年のLIVE DESIGN School開校時から運営に関わり、2025年に代表に就任。各地で活動する講師陣とともに、地域とデザインを学び合う場を支えている

トークキャラバンには、書籍の帯文を書いてくださったグラフィックデザイナーの原研哉さんにも登壇いただいたのですが、その場で、本書の内容をスクールとして広めていくことを提案していただきました。それが契機となって、2023年から開校しています。「LIVE DESIGN」という名前も、著者デザイナーたちの活動を本質的なものとして捉えてくださった原さんからご提案いただきました。

本書で紹介されているデザイナーのみなさんは、地域でのデザイン活動が注目される前から、仕事があるかどうかもわからない場所で独自の道を切りひらいてきた人たちです。これまでは、「孤独だった」と口々に話していました。本書を通じて「こんなに仲間がいたんだ」とわかり、もっと互いに学び合いたい、一緒に何かをやりたいと思えた。その出会いのエネルギーが、スクールの出発点になっているんだと思います。

――講師のみなさんは、どのようにスクールに関わっているのでしょうか?

著者のうち、スクールの立ち上げに賛同して手を挙げてくれた11名のデザイナーが「リードデザイナー」として講師を務めてくれています。彼らは一方的に正解を教えるのではなく、自らの実践を共有しながら、参加者と学び合う姿勢を大切にしています。自分たちの知見や方法をそのまま見本にしてほしいというより、「学べるところがあったら学んでね」「むしろ参加者からも学びたい」というスタンスです。

11名のリードデザイナーのポートレート(吉野 敏充さん、さとう てつやさん、迫 一成さん、羽田 純さん、新山 直広さん、稲波 伸行さん、坂本 大祐さん、堀内 康広さん、小林 新也さん、福田 まやさん、佐藤 かつあきさん)
日本各地を拠点に活動する11名のリードデザイナーたち

活動している場所も、村から地方都市までさまざまです。ブランドづくりから流通や店舗まで手がける人、地域文化をアーカイブする人、自分で山を買って里山をつくる人もいる。地域の状況も、テーマも、強みも違うので、そこで行われるデザインのあり方も多様なんです。

それでも、スクール全体には不思議な一体感があり、楽しく学びやすい雰囲気が醸成されているのが特徴です。通常のスクールでは、講師は招かれるだけのことが多いですが、LIVE DESIGN Schoolではリードデザイナー自身が自分たちでつくった場としてスクール運営に関わっていることが大事な意味を持っています。

自分が住む地域に参加者が来て、一緒に飲み食いをして、プログラム外でもまた会いに来てくれる。そのこと自体を楽しみ、自分たちも学び合っている。その関係が、場の居心地のよさにつながっていると思います。

自分の世界の外に触れ、学びたいことを問い直す

――プログラムの内容と、参加している方々について教えてください。

基本のプログラムは、リードデザイナーの地域を訪ねる「フィールドワーク」、彼らの活動や考えを聞く「レクチャー」、参加者が自分のアイデアや活動構想を発表する「アクションシェア」の3つです。そこから発展して、参加者が自分の地域にリードデザイナーと他の参加者を招いてフィールドワークを主催する「フィールドアクション」も生まれました。プログラム自体も、参加者とともに毎年変化しています。

芝生の広場にテーブルが置かれ、十数名が談笑しながら食事をしている様子
大分県・耶馬溪でのフィールドワークの様子。リードデザイナーの福田さんが持つ広場にて、昼食を楽しむ参加者

参加者の半分ほどはデザイナーを含むクリエイティブ職で、もう半分は非クリエイティブ職、たとえば行政やまちづくりに携わる方、地域おこし協力隊の方などです。最初からデザイナー以外にも参加してほしいという思いがありました。地域で活動するには、さまざまな立場の人と一緒に取り組むことが欠かせないですし、非クリエイティブ職の方がデザインに触れることも大事にしたいからです。

――地域を訪ねることで、どのような学びが得られるのでしょうか?

大切なのは、自分の世界の外に触れることです。地域を訪ねると「想像以上に面白い」「こんな生き方があるんだ」と感じたり、自分の思い込みに気づいたりする。地域の文化や職人さんの言葉、リードデザイナーの活動に触れることで、自分にとっての当たり前が揺さぶられるんです。

雪が積もる山林を歩く10名ほどの参加者。周囲にはトラックや重機が置かれている
京都府の久多では、猟も大工も行う「百姓」の参加者とともに、生きることについて考えるフィールドアクションが行われた

そこから「どんなデザインをしたいのか」「何を大切にして、どう生きたいのか」を考え直す。特定のスキルの習得を目的にしているわけではなく、学びたいことそのものを問い直せるのが、このスクールの大きな意義だと思っています。

発表を行う人物と、それを芝生に座って聞く参加者
兵庫県でのフィールドワークの様子。2日間の視察を終え、自分にとっての「幸せ指標」を発表する参加者

リードデザイナーの話を聞けば聞くほど、地域で活動することの複雑さにも気づきます。デザインが上手だから仕事がうまくいった、という単純な話ではなく、ある人との関係が深かったからこそできた仕事もある。地域の方との向き合い方や、文化の掘り起こし方など、言葉だけでは伝えにくいことを現地では体感できます。

ただ、同じ方法でも同じ結果になるとは限りません。地域の資源や人との関係の中で、それぞれの状況で試行錯誤する必要がある。参加者には、自分のフィールドでまずやってみることを促したいと思っています。

――フィールドワークでは、アウトプットも大切にされているとか。

見聞きして終わらず、何かを表現して帰ることを大切にしています。文章やエッセイを書くこともあれば、その場でものをつくることもある。たとえば商店街をフィールドワークしたときには、即興で商店街の魅力を伝えるラジオ番組を収録した参加者もいました。

パソコンを使って制作を行う参加者
新潟フィールドワークの最終アウトプットは、その地域の「商店街にあったらいいもの」をテーマに制作

自分の興味関心に従って表現するので、クライアントワークに慣れたデザイナーの方が、かえって戸惑うこともあります。普段は依頼や要件があるけれど、ここでは自分が何を感じたかが出発点。大学生がのびのびと取り組む姿を見て、自分が普段のやり方に囚われていたことに気づく人もいるようです。

アウトプットに対しては、評価する・されることが目的ではありません。地域で触発されて、自分の中から湧いてきたことを素直に出してみる。その行為を通じて、自分とクリエイティブへの理解が深まるといいなと思っています。

地域同士で学び合い、仲間と実践を育む

――学びが実践につながった例を教えてください。

山形県最上郡金山町で地域おこし協力隊として活動する川村佳恵さんの例があります。川村さんは、福井県の越前市・鯖江市を訪ねる「越前鯖江」のフィールドワークで、若者が安心して集まれる場の存在が町に活気を生み出している光景に刺激を受け、自分の町でもそうした場をつくりたいと思うようになりました。

彼女はもともと金山で「かぷりば」という移動式本屋の活動を実践していました。その活動を広げて交流人口やコミュニティの活性化につなげていけないか。そうした活動を続けながら、地域おこし協力隊の卒隊後はどのように金山で飯を食っていくのか――その構想をスクールの仲間たちと練るために、金山町で2泊3日のフィールドアクションをホストしてもらうことになりました。

金山町と共通点の多い奈良県東吉野村を拠点に活動するリードデザイナーの坂本大祐さんと、ほかの参加者も一緒に、地域の人に話を聞いたり、空き家や文化資源を見て回ったりしました。特に坂本さんには、川村さんをクライアントに見立て、初めてのリサーチに取り組むつもりで町の魅力やコミュニティ、事業の可能性を考えてもらいました。

資料館のような場所で展示を指さしながら説明する地域の人とそれを聞く参加者
金山町でのフィールドアクションにて、地域の人に話を聞く様子

越前鯖江で一緒に学んだ仲間も、川村さんが持つ悩みや課題を知っていたので「それなら自分も行く」と参加してくれて。悩みを共有した仲間として、力になりたいと思えるつながりが生まれています。第1回のフィールドワークでは現状と課題を整理し、今は再訪問に向けて有志でプランニングを進めているところです。

民家の和室に集まり、役場の人の話を聞く参加者
金山町役場の人とスクール参加者たちによる交流の様子

地域の人との関係を築き、独自の実践を重ねてきたデザイナーと、地域をまたいで学び合える。共通点と違いをそれぞれ理解しながら、自分たちの地域らしいデザイン活動を考えられるようになってきた点に可能性を感じています。

――地域から学ぶことの意義をどう考えていますか?

地域には文化やものづくり、人との関係など都市部では失われつつある豊かさがありますが、それらも放っておけば失われてしまいますし、そもそも昔のまま残せばいいという話ではありません。たとえばものづくりでいえば、実態として下請け構造の厳しさがあったり、環境の問題があったりする。地域の実践者が持つ信念や想いにあらわれる豊かさと、その人が向き合っている課題の両方を知ることが大切だと思っています。

地域の豊かさを見いだし、現代の暮らしに届けたり、課題を前向きに捉え直したりする力がデザインにはある。リードデザイナーたちは地域の人と健やかな関係を築きながら、自分なりの問題意識を持って活動しています。その人との関わり方や生き方にも、参加者は刺激を受けているのだと思います。

「また会いたい」が、学び続ける力になる

――学び続けるために、大切なことは何でしょうか?

まず、楽しいことです。この景色が好き、この人にまた会いたい。温泉に入りに行きたい、でもいいと思っています。そこに忘れられない場面や心をつかまれる出会いがあると、学び続ける衝動に育っていくと思うんです。

以前、岐阜県の飛騨地域で実施した、林業や製材について考えるフィールドアクションでは、製材に使う鋸を研磨・調整する「目立て」の職人に話をうかがいました。その世界にすっかり魅了されて、東京から飛騨へ度々通うようになった参加者がいます。最近は、目立てについての作戦会議にも参加していたそうで、スクールを運営する私たちも驚きました。

雪が降る中、製材所の前で話を聞く参加者
飛騨でのフィールドアクションでは、製材所を営む参加者と木材流通の川上から川下までを訪ねた

そんな風に、心を動かされた人や技術に楽しく関わり続けることが学びを深めていくのだと思います。スキルを磨く学びも必要ですが、このスクールでは、自分の前提や世界の見方そのものを捉え直すような学びを参加者と共有したいと思っています。最初から変化を求めるより、面白くて夢中になって気づいたら自然と変わっていた。そういう場をつくりたいですね。

――今後、広げていきたいことを教えてください。

これまでは地域への入口とつながりをつくってきたので、これからは、その先の実践を深める人を増やしたい。地域にいる人の活動を支えながら、都市部や別の地域に住む人も一緒に取り組めるチームづくりができたらと考えています。

今いる場所に暮らしながら、好きになった地域や出身地に関わることもできる。地域の文脈を知り、人との関係を築くことで、すでに持っているスキルを生かせる場面もたくさんあります。スクールを入口に、一人ひとりの関心が仕事や個人の実践へつながっていく道を育てていきたいと思っています。

■LIVE DESIGN School
https://live-design-school.com/

文:高野瞳 取材・編集:萩原あとり(JDN)