本研究は、日本初の常設映画館「浅草電気館」を核とした、地域住民のためのシアター再生とまちづくり計画である。
かつて興行街として栄えた浅草六区は、現在、インバウンド需要の増加により外国人観光客で溢れ、地元の人々が日常的に集える「居場所」が失われつつある。そこで、映画館を単なる鑑賞施設ではなく、地域コミュニティを再生する拠点として再定義した。
設計の柱は、街と館内をシームレスに繋ぐ誘導デザイン「浅草ふいるむろーど」である。浅草の「赤」と「フィルム」を掛け合わせたパブリックアートが、駅から館内へと自然に人々を誘う。館内には、広々としたロビーや、鑑賞スタイルに合わせ、ひとりで集中できる「Monologue」と、他者と感動を共有する「Resonance」という対照的なシアターを用意。すべての座席にゆとりあるソファを採用し、従来の映画館にはない「心地良さ」を追求した。
地元の人々が再び「自分の街」としての誇りを取り戻す、新たな浅草の風景を提案する。