「コメビト」とは、米農業に多様な距離感で関わるすべての人を指す呼び名である。後継ぎだけを担い手と捉えるのではなく、学びに来る若者、地域住民、都市の訪問者など、“関与の深さを自ら選ぶ人々”を等しく米づくりの仲間として位置づける考え方だ。
計画の原点には、米農家の一人娘として田んぼの風景の中で育ちながら、家業を継がないという自身の経験がある。“継ぐ/継がない”という二択に地域の未来を委ねることへの違和感が、関わりの選択肢そのものを拡張する必要性へとつながった。
敷地は、河内町の旧長竿小学校。住宅地と田んぼが隣り合うこの場所は、暮らしと農が地続きに存在する環境をそのまま持ち込み、米づくりを“生活の延長”として学ぶ場として適している。また敷地の一部では株式会社トキタがキャビア養殖を継続しており、その既存利用を尊重しながら、校舎と裏の駐車場のみを再編対象とした。
廃校という「学びの器」を、地域に開かれた新たな学びへと反転させ、日常の延長の中で田んぼへ向かい、戻り、関わりを深めていく。その行為の積み重ねによって、“コメビト”としての関わり方が自然と育っていく風景をつくることが、本計画の中心にある。