境界線

インクジェットプリント25枚
緑拓登/芸術学部 写真学科
境界線
境界線

山に登る時、自分の中に2つの感情が存在している。怪我をしたり命を落とすかもしれない「怖さ」と非日常や雄大な自然に身を置きたいという「好奇心」である。岩に足を掛け、次に何処を掴むべきか、どの経路で登っていくのかを考える。恐怖心と闘いながら、ふと周りに広がる景色を見て感動し、突風に煽られバランスを崩す。このようなことを繰り返しながら頂上を目指していく。自分の中に生じるそうした矛盾は、生と死の境界線のようなものに感じた。広大な山の中を歩く時、聞こえるのは風に揺れる木々の音や、岩の隙間を抜けていく風切り音だけだ。周りに人の気配が無くなり、一人きりになる。私は初めてそこで「非日常」な瞬間を体験する。それと同時に、遭難や滑落などのリスクが頭をよぎり、「1人にはなりたくない」と感じるようになる。見ず知らずの他人でも、そこに居るだけで感じる安心感を求めてしまう。山は、生と死の境界がすぐ近くに迫ってくる場所でもある。そうした美しい自然に見え隠れする恐怖を写していく。

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